研究内容

量子十字構造素子のトランスポート理論
分子エレクトロニクスデバイスやスピントンネルデバイス等のFace-to-Face構造(面と面が互いに対向した構造)の トランスポートに関しては今までに明らかになっているが, Edge-to-Edge構造(縁と縁が互いに対向した構造)については明らかになっていない.

 @そこで, Edge-to-Edge構造の量子十字構造素子のトランスポートに関して,トンネル接合が形成されていると仮定して,理論計算を行った. 図1に示すEdge-to-Edge構造において, 自由電子モデル, 及び, WKB近似を適用し理論式を導いた.

 これにより, 印加電圧の上昇に伴い電流密度が増加する現象(Face-to-Face構造で見られるトンネル効果)の他に, 2次元金属リボン幅が薄くなるに従い電流密度が小さくなることがわかった。上部電極のz方向の量子化と下部電極のy方向の量子化に起因する。また, 本理論計算を用いれば, 実験結果とのフィッティングにより金属リボン間の薄膜絶縁層の膜厚及びバリア高さを求めることができる.

 A量子十字構造素子がトンネル接合を形成しておらず, EdgeとEdgeの間に単一分子やその他のエネルギー準位のある半導体などが挟まれている場合は,WKB近似では輸送特性を計算できないので, 電極の次元性を考慮したAnderson Hamiltonianを定式化して,電極と電極の間に挟まれた原子や分子やナノ半導体粒子との結合定数を変化させて,計算を行った. 図2は量子十字構造素子をモデル化した図であり,図3は計算に用いたハミルトニアンである.

 これにより, 結合定数のエネルギーが室温に対して小さい場合は,きれいな量子化されたコンダクタンスが観測され, 消費電力も10〜100nW以下に抑えられ、低消費電力のデバイスの候補になり得ることが判明した。 また結合定数のエネルギーが室温に対して大きい場合は,量子化された伝導は鈍るが、まだ観測可能な事がわかった。 さらに,強結合極限(挟まれた分子などが無視できる極限)では,オーミックな特性が得られ,理論の整合性が確認できた. 今後は実験との比較によってこの結合定数を決める必要がある.



[1] K. Kondo and A. Ishibashi:
"Energy Spectrum of Two-Dimensional Electron Gas to be Used in Quantum Cross Structures",
Jpn. J. Appl. Phys. Vol.45, pp.9137-9139 (2006).

[2] H. Kaiju, K. Kondo, and A. Ishibashi:
” Quantum-Cross Tunneling Junction for High Density Memory”,
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., Vol. 961 pp.O5.5.1-O5.5.6 (2007)

[3] 近藤憲治:”ナノデバイスの現状と低次元電子ガスの理論的特性”,化学工業, Vol.59, pp.1-8 (2008).

[4] K. Kondo, H. Kaiju, and A. Ishibashi:
” Theoretical Investigation of New Quantum-Cross-structure Device as a Candidate beyond CMOS”,
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., Vol.1067, pp.B03011-B03016 (2008).

[5] K. Kondo, H. Kaiju, and A. Ishibashi:
“Theoretical and Experimental Results of Electronic Transport of Spin Quantum Cross Structure Devices”,
J. Appl. Phys., Vol.105, pp.07D522-1 07D522-3 (2009).

[6] K. Kondo:
“Theoretical modeling of spin quantum cross structure devices with noncollinear ferromagnetic electrodes”,
J. Appl. Phys., Vol.107, pp.09C709-1 09C709-3 (2010).

[7] H. Kaiju, K. Kondo, and A. Ishibashi:
“Current-Voltage Characteristics in Nanoscale Tunnel Junctions Utilizing Thin-Film Edges”,
Jpn. J. Appl. Phys. Vol.49, pp. 105203-1-105203-5 (2010).

[8] K. Kondo, H. Kaiju, and A. Ishibashi:
“Large Thermoelectric Voltage in Point Contacts of Ni Ferromagnetic Metals”,
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., Vol.1314, pp.LL08-36-1-LL08-36-6(2011).

> スピン量子十字構造素子のトランスポート理論に関して
> 量子十字構造素子の作製方法に関して
> 電子相関理論に関して
> 準粒子の厳密なエネルギー計算に関して


図1: 量子十字構造素子のトランスポート計算モデル   (WKB method)
金属リボンのフェルミエネルギーは5.51 eV (for 金(Au)原子), 温度は300 Kとした. 金原子の場合, Sharvin’s formulaを用いるとコンタクトサイズ径が2-3 nm以下にて量子化コンダクタンスが起きる. 本計算ではその効果を除外するため, 金属リボン幅を2-3 nm以上とした.



図2: 量子十字構造素子のトランスポート計算モデル(Modified Anderson Hamiltonian method)




図3: 図2で用いたAnderson Hamiltonian


































研究内容
・ トップダウン系とボトムアップの接続の基礎
・ 2次元電子系の電子相関
・ 準粒子の厳密なエネルギー計算
・ 任意ポテンシャルに閉じ込められた電子の電子密度計算
・ 量子十字構造素子のトランスポート理論
・ スピン量子十字構造素子のトランスポート理論
・ 光電変換デバイスの作製とその評価
・ 高清浄環境の構築


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