スピン量子十字構造素子ならびにスピン伝導の研究


スピン量子十字構造素子(SQCS)の模式図 SQCS素子に関係する物理の相関図

研究実施の目標
 次世代超高密度メモリやBeyond CMOSスイッチングデバイスの創製、並びに、スピン伝導及び 遍歴磁性の本質的理解を目指し、我々はナノスケールのコンタクトを有する量子十字構造デバイス (Quantum Cross Structure Device)を提案している。
 有機膜の上に金属もしくは半導体を蒸着させ、この蒸着膜のエッジを互いに直交するように貼り 合わせると、導電性薄膜のエッジとエッジが互いに対向した新規な構造のデバイスができる。  これが量子十字構造デバイスである。特に電極に強磁性薄膜を用いた場合に、スピン量子 十字構造デバイス(Spin Quantum Cross Structure Device)と呼んでいる
 膜厚1〜20 nmの金属(半導体)薄膜を用いれば、原理的に1〜20 nmサイズの超微細接合が作製 可能となり、これにより、例えば導電性薄膜間に自己組織化単分子膜(SAM)、DNA等を挟む と、これらの少数分子あるいは単一分子系のキャラクタリゼーションが可能となる。
 また、導電性薄膜間に有機分子膜を挟めば、次世代超高密度メモリ、Beyond CMOSスイッチング デバイスへの応用も可能となる。さらに、電極に強磁性体を用いれば、新たなスピンデバイスが創製できる。
 そこで、我々はこのような新機能を有する量子十字構造デバイスの実現に向け、理論面からは アンダーソンモデルを用いて、量子十字構造デバイスにおけるトランスポート、並びに、 スピンを考慮したトランスポートに関する研究を行っている。
 実験面からは、Ni薄膜のエッジとエッジ間に有機分子を挟んだ量子十字構造デバイスを作製し、 アライアンス連携共同研究のもと、その構造特性・電気的特性評価を行っている。
研究内容(理論)
 スピン量子十字構造デバイスの輸送特性の理論的検討 量子十字構造の電極に強磁性金属を用いた場合をスピン量子十字構造デバイスと呼び、 この構造に2準位分子を挟んだときに、電極の磁化がノンコリニアな場合について、 非平衡グリーン関数を用いて、スピン伝導の一般式を得た。 図1(a)、(b)に、ノンコリニアな磁性がある場合のスピン量子十字構造デバイスの模式図と計算に用いたモデルを示す。
図1(a) 図1(b)
 従来、ノンコリニアな系の計算において、角度θは考慮されていたが、φは考慮されていなかった。 今回、初めて、方位角φを考慮した一般式を得ることに成功した。その結果、方位角は輸送方程式には、 顕に現れなく、スピン伝導は、両方の磁化(スピン)を古典ベクトルと見た場合の 内積のなす角度θにのみ依存する事がわかった。但し、電極間にある分子において、 伝導スピンがフリップすることを許すと、分子のエネルギー準位が方位角φの影響で、 分裂することもわかった。この事から、もし分子の準位の分裂が観測されれば、 分子内でスピンがフリップしている事がわかる。ノンコリニアな系の一般式は次式のようになる。

分子内でスピンがフリップしない場合に上式で計算した電流-電圧特性を図2に示す。また電流のθ依存性を図3に示す。
図2 図3


研究内容(実験):スピン量子十字構造素子の実現
 ニッケル強磁性金属を電極に採用し、電極間にP3HT:PCBMの有機物質の ブレンドを挟むことによって、スピン量子十字構造デバイスの実現化を試みた。
 図4にそのNi/PCBM:P3HT/Niスピン量子十字構造デバイスの作製方法を示す。 初めに、PEN有機膜上にNi薄膜を蒸着する。このNi薄膜/PEN有機膜を2組用意し、 それぞれを両側から2つのPMMAで挟む。次に、Ni薄膜のエッジを機械化学研磨法により研磨し、 最後に、Ni薄膜のエッジとエッジの間に [6,6]-phenyl-C61 butyric acid methyl ester (PCBM): Poly-3-hexylthiophene (P3HT)を挟む。
 図5にNi/PCBM:P3HT/Niスピン量子十字構造デバイスの電流電圧特性を示す。 Niの膜厚は16nmとしたので、接合面積は16nm×16nmとなる。図5からわかるように、 オーミック特性が得られ、その抵抗は32Ωあった。これは、アンダーソンモデルを用いた理論計算結果26.2Ω(強結合)と 定量的な良い一致を示すことから、ナノ領域での分子伝導を捉えた結果であると示唆される。
図4 図5
                  
[1] K. Kondo, H. Kaiju, and A. Ishibashi:
"Theoretical Investigation of New Quantum-Cross-structure Device as a Candidate beyond CMOS",
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., Vol.1067, pp.B03011-B03016 (2008).

[2] K. Kondo, H. Kaiju, and A. Ishibashi:
"Theoretical and Experimental Results of Electronic Transport of Spin Quantum Cross Structure Devices",
J. Appl. Phys., Vol.105, pp.07D522-1 07D522-3 (2009).

[3] K. Kondo:
"Theoretical modeling of spin quantum cross structure devices with noncollinear ferromagnetic electrodes",
J. Appl. Phys., Vol.107, pp.09C709-1 09C709-3 (2010).

[4] H. Kaiju, K. Kondo, A. Ono, N. Kawaguchi, J. H. Won, A. Hirata, M. Ishimaru, Y. Hirotsu and A. Ishibashi:
"The fabrication of Ni quantum cross devices with a 17 nm junction and their current-voltage characteristics",
Nanotechnology, Vol.21 pp. 015301-1-015301-6 (2010).

[5] H. Kaiju, K. Kondo, N. Basheer, N. Kawaguchi, S. White, A. Hirata, M. Ishimaru, Y. Hirotsu, and A. Ishibashi:
“Fabrication and Current-Voltage Characteristics of Ni Spin Quantum Cross Devices with P3HT:PCBM Organic Materials”,
Mater. Res. Soc. Symp. Proc., Vol.1252 pp. J02081-J02086 (2010).

[6] H. Kaiju, K. Kondo, and A. Ishibashi:
“Current-Voltage Characteristics in Nanoscale Tunnel Junctions Utilizing Thin-Film Edges”,
Jpn. J. Appl. Phys., Vol.49 pp. 105203-1-105203-5 (2010).

> 量子十字構造デバイスのトランスポート理論に関して
> 電子相関理論に関して
> 準粒子の厳密なエネルギー計算に関して





研究内容
・ トップダウン系とボトムアップの接続の基礎
・ 2次元電子系の電子相関
・ 準粒子の厳密なエネルギー計算
・ 任意ポテンシャルに閉じ込められた電子の電子密度計算
・ 量子十字構造素子のトランスポート理論
・ スピン量子十字構造素子のトランスポート理論
・ 光電変換デバイスの作製とその評価
・ 高清浄環境の構築


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ナノ構造物性研究分野
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